今日の2足

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日本のファッションフリーク、特に自分たち世代は世界で最も服や靴の生産国にこだわっていたジェネレーションといっても過言ではありません。それだけにリーバイス501、ヘインズの3枚パックTシャツ、コンバース オールスターといった定番アイテムがアメリカ製でなくなるというニュースを聞いたときは残念だったし、他国製となってしまったそれらアイテムとはしばらく距離を置く人もいましたね。あとはよくチェックせずにアメ横でスタンスミスを買い、それがフランス製ではなくモロッコ製であることに山手線内で気付き、買ったお店まで戻ってフランス製に交換してもらった友人がいたのも懐かしい思い出。

 

大学卒業後にスポーツシューズブランドに入社し、韓国、台湾、タイ、インドネシアといったアジア各国の生産現場を見ましたが、そのとき最も重要だと思ったのは「どこで作るかということよりもどう作るか」であり、管理指導する人がしっかりしていたら、アジア地域でも品質の高いプロダクトを生産することはできるということ。納得できる品質の製品を生産するのに最も重要なキーワードは“国”ではなく“人”でした。

 

どうして生産国の話をしたかというと、先日丸紅フットウェアの諸越さんと会食したときに、「ウィルダネスとレザーのイタリア生産が終了してしまうんです…」というショッキングな情報を聞いたから。ウィルダネスといえば質実剛健を絵に描いたような耐久性に優れたハイキングブーツの名作で、外観ではブルーのシューレースがトレードマーク。アウトドア愛好家だけでなく、ファッションフリークからも高い支持を受けていたメレルの顔と言っても過言ではない1足。一方のレザーは1981年に登場したメレル最初のハイキングブーツを起源とし、1988年に「Backpacker」誌でベストハイキングブーツに選出されたモデルの日本限定復刻シューズ。ウィルダネスよりもスリムなフォルムを気に入っているメレルファンは少なくありません。そんなウィルダネスとレザーですが、買ったその日から快適な履き心地が得られる最新フットウェアと異なり、少しずつ足とシューズをなじませる過程が不可欠。最初の内は決して快適な履き心地とはいえません。それに加え普通のアウトドアシューズの4~5倍の価格であることもあって、これまでもずっと興味はあったのですが、なかなか購入までには至りませんでした。しかしながらイタリア生産が終了という話を聞いて、迷わず両モデルを手に入れました。

 

2足ともイタリアのヴェネト州モンテベルーナ地区で生産されているのですが、この街とアウトドアシューズ、スポーツシューズ生産のつながりは密接で、自分も2006年にナイキのサッカーシューズ、ナイキ マーキュリアル ヴェイパー IIIの生産工場を訪れましたが、働いている人たちからは職人の雰囲気が感じられました。アジアのスポーツシューズ工場で働いている人たちのことを工員と呼ぶことは多いですが、モンテベルーナで働いている人をそうは呼びにくい。彼らが醸し出す雰囲気はやっぱり職人そのものだったから。先程「どこで作るかということよりもどう作るか」と書きましたが、長年サッカーシューズやアウトドアシューズの生産現場で靴作りを任され、シューズの構造を熟知した職人たちが作り上げるプロダクトは、アジア製のシューズと雰囲気がいい意味で異なっていました。サッカーシューズでいえば履き口が締まっていて、足首部分に隙間なく沿う構造であり、そのきれいなフォルムは日本製以外のサッカーシューズでは実現不可能でした。

 

話をメレルの2モデルに戻すと、この2モデルにもイタリアのクラフトマンシップが継承されているはずで、実際に履いてみるのが本当に楽しみでした。イタリア製のハイキングブーツを履くのはかつてビームスで展開されていたダビデというブランドのプロダクト以来。通常のメレルの箱の2倍はあろうかという大型の箱からまずウィルダネスを取りだします。ずっしり重く、アッパーのレザーも3mmと極厚で、足に馴染ませるのは手強そう。ポジティブに考えれば足に馴染ませるという行為を長期間楽しめるということですね。もう一方のレザーは上質なブラウンレザーのアッパーで、ウィルダネスよりも明らかに軽い。カタログデータだと100グラム弱軽量です。ウィルダネスのほうはガッチリと足を保護する感じの履き心地に対し、レザーのほうは足との一体感が高く、こちらのほうが足馴染みは早そう。ラスト(木型)と製靴法も異なるので、ウィルダネスはUS7.5、レザーはUS8のサイズを選びました。デニムが自分のカラダに馴染んで、色も経年変化していくのと同じように、この2足を自分の足の一部にする作業は本当に楽しみです。どちらのモデルも自分の足に馴染ませれば、最高の履き心地になるし、アウトソールの交換も可能なので、10年、20年と付き合えるでしょう。

 

ウィルダネスもレザーも在庫のほうはかなり少なくなっているみたいなんで、興味ある人は早めのチェックが吉。「あのとき買っておけば…」というのだけは避けたいところです。都内だと新宿小田急ハルク、吉祥寺、池袋、二子玉川etc.のメレル直営店やABCマートGS池袋、ASBEE渋谷あたりで展開しているようです。2モデルともフィッティングが重要なので、インターネット通販よりも実際に店舗に行って試履きすることをオススメします。

 

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このMADE IN ITALYの文字が見られなくなるのは悲しいです。

 

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ウィルダネスは秋冬のイメージがあるかもしれませんが、ショーツとコーディネートするのもいいですよ。自分は今季のホワイトマウンテニアリングのショーツと組み合わせてみました。

 

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バッファローグリーンのパタゴニアのバギーパンツとレザーをコーディネート。個人的には絶妙なカラーコンビネーションだと思いますが、いかがでしょう。

 

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ウィルダネスもレザーもアウトソールはビブラム社製のクラシックなラグパターン。悪路を始めとしたあらゆる路面で高いグリップ性を発揮します。アウトソールの張り替えも可能なんで、長い付き合いができそう。